孤独女と王子様
『待ってたよ、赤ちゃん』

さっきまで苦痛だったはずなのに、もう微笑んでいる由依ちゃんは、すごいと思う。
それでも僕は忘れなかった。

「由依ちゃん、お疲れ様。そしてありがとう」

と、言葉で感謝を伝えることを。

夜になって、舟さんが来てくれた。

『妻と娘がほぼ同時に出産を迎えると、なかなかこっちも大変だよ』

と舟さんは苦笑いしているけど、顔は幸せそうだ。
今までにない、心地よい忙しさと疲れなんだろうな。

翌日夕方には、ケン兄さんとレナっちが来てくれた。

『お仕事忙しい中、ありがとうございます』
『体調はどう?』
『はい、問題ないです』

由依ちゃんは、母乳をあげるのに慣れていないようだけど、それ以外は健康そうだ。

すると、開きっぱなしの個室のドアを"コンコン"と叩く音が。

『こんにちは』

白衣姿の若い先生。
こんな先生、産婦人科にいったっけ?

でも、どこかでこの人、見たことあるような・・・
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