絆テレパシー
――AM10:22
駅につき、改札を抜けると彼女は
(付いてきて。)
と信号を送ってきた。どうやらここからは徒歩で移動のようだ。俺は黙って頷く。
困ったのは、彼女の横を歩くべきなのか、後ろから適度な距離を開けて歩くべきなのかということであったが、彼女が
(後ろからだとストーカーみたいだからやめて)
と微笑みながら言い(もちろんテレパシーで)、結局二人で並んで歩いた。普通ならここでドキドキソワソワするのであろうが、目的地に着いた後の未知のことを思うと別の意味で鼓動が自然と速くなる。
徒歩で移動しているうちも彼女は何もしてこなかった。それが余計に不安を掻き立てる。
10分くらいたっただろうか、彼女の足がおる建物の前で止まった。
(着きました。)
一軒家だった。驚きを隠せない。そんな俺を置いて、彼女は躊躇なく玄関口へ歩みを進める。
そして、ドアを開け、
(どうぞ、上がってください)
(あ、あぁ…)
表札を確認する。
――神崎――
紛れもない彼女の家だった。

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