私の人生でたった一度の恋でした。


兄貴が生きていた頃は、それなりに幸せだったんだ。


両親がいて、兄貴がいて、歌優がいて。


だけど、その幸せな家庭を俺が壊したんだ。


ー10年前ー



その日は、俺と歌優の誕生日だった。



「お兄ちゃん!僕あのケーキ食べたい!!」


あの時は、大雨だったのに俺は駄々をこねて兄貴に買いにいってもらった。



親も、歌優も止めたのに…


俺のわがままを聞いてくれてバイクで出かけたんだ。



何時間しても帰ってこない兄貴に、皆焦っていた。



3時間経った頃、家に電話がかかってきた。


カチャ


「はい、斉藤ですけど。」


その瞬間、母は泣き崩れた。


小さい俺でもわかったよ…。


兄貴に何かあったんだって。


それから、どうやって病院に向かったのかは分からない。


けど、いつの間にか病院についていた。


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