私の人生でたった一度の恋でした。


「大丈夫だろう。昨日の頭痛からの影響だと思うんだ。だから、今日はゆっくり休みなさい。」


「わかりました。」


「それで、叶星くんに話したいことがあるんだけど今時間あるかい??」


「あ、はい!じゃあ、歌優任せたぞ。」


「はーい!」


ガラガラ


先生は、部屋に着くまでずっと無言だった。


先生なに考えてるんだろう。


なんで、俺だけ呼び出されたんだ?


叶星にはふつふつと疑問が浮かんで来た。


ガラガラ


「入りなさい。」


「失礼します。」


「「…。」」


入ってからも無言だった。


話を切り出したのは先生だった。



「叶星くん。星輝ちゃんの病気が悪化してるって言ったよね?」


「はい、それで転移も見つかったって。」


「うん、そこの転移の場所なんだけど…。」



そこからは、全く先生の話が頭に入ってこなかった。


いや、理解したくなかったんだ。



‘‘星輝ちゃんは、日に日に記憶がなくなっていく’’



癌は、日常生活を記憶するところに転移したんだ。


もちろん、そんなところに癌ができたら記憶は無くなっていく。


どんどん、俺たちの事がわからなくなるんだ。


いつかは、自分のことも…。


「クソッ!!!!なんで、あいつだけいつも…」


叶星は、悔しそうに顔を歪めていた。


一人で考えていたんだ。

これからどうしようと…。


まず、歌優には話さないといけない。


「どうすればいいんだよ!わかんねーよ!!うっ…ゔぅ」


叶星は、誰もいない廊下で声を押し殺して泣いていた。


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