シーサイド・ティアーズ~潮風は初恋を乗せて~
第1章 初日
思い出の島へ
8月の青空の下、潮風が心地よく頬を撫でる。
私を乗せたフェリーは、空よりも深い青色をしている海に、白い波しぶきで線を引きながら、快調に走っていた。
カモメが数羽、フェリーと併走しながら飛んでおり、時折鳴き声をあげる。
さきほど、持っていたお菓子を幾つかあげたので、味を占めて寄ってきたのだろうか。
私は「もう何も持ってないよ」という風に手を振ったが、カモメたちはお構いなしの様子だ。
太陽は強く照りつけ、気温は上昇しているはずだが、潮風のおかげか、さほど暑さは感じない。
いつしか、私の眼前に、島の姿が見えていた。
木々の濃い緑色が島を覆っているようだ。
あれが、生まれ故郷の漣渚島(れんしょじま)……。
私にとっては20年ぶりの故郷だ。
潮風の香りが、ますますあたりに広がっていくように感じた。
どこか懐かしいこの香りが、私の記憶を呼び覚ます。
20年前の夏の記憶を……。
一緒に貝を拾った、あの子のことを……。
離れ離れになって以来、一度も会っていない……そして、今後も再び会えるかどうかは分からない、彼のことを……。
その彼、「ショウ君」は私の幼馴染だ。
私たちは漣渚島で生まれ育った。
そして、同じ幼稚園へ通っていた私たち。
私が彼に対する自分の気持ちに気づいたのは、5歳の夏。
彼はすでに6歳になっていたけど、誕生日の関係で同じ学年だった。
彼のことが好きだと自覚してからは、一緒にいるだけでドキドキが止まらなかったことを覚えている。
しかし、突然、恋は終わりを告げた。
彼はその秋に、引っ越して島を離れていってしまったから……。
彼への恋を自覚したのが夏ということで、彼との思い出の中で特に印象深いものは、ほとんど全て夏の出来事だ。
まだ5歳だったので、残っている記憶は断片的ではあるけど、彼との思い出は、深く深く私の心に刻みこまれている。
きっと一生忘れない。
私を乗せたフェリーは、空よりも深い青色をしている海に、白い波しぶきで線を引きながら、快調に走っていた。
カモメが数羽、フェリーと併走しながら飛んでおり、時折鳴き声をあげる。
さきほど、持っていたお菓子を幾つかあげたので、味を占めて寄ってきたのだろうか。
私は「もう何も持ってないよ」という風に手を振ったが、カモメたちはお構いなしの様子だ。
太陽は強く照りつけ、気温は上昇しているはずだが、潮風のおかげか、さほど暑さは感じない。
いつしか、私の眼前に、島の姿が見えていた。
木々の濃い緑色が島を覆っているようだ。
あれが、生まれ故郷の漣渚島(れんしょじま)……。
私にとっては20年ぶりの故郷だ。
潮風の香りが、ますますあたりに広がっていくように感じた。
どこか懐かしいこの香りが、私の記憶を呼び覚ます。
20年前の夏の記憶を……。
一緒に貝を拾った、あの子のことを……。
離れ離れになって以来、一度も会っていない……そして、今後も再び会えるかどうかは分からない、彼のことを……。
その彼、「ショウ君」は私の幼馴染だ。
私たちは漣渚島で生まれ育った。
そして、同じ幼稚園へ通っていた私たち。
私が彼に対する自分の気持ちに気づいたのは、5歳の夏。
彼はすでに6歳になっていたけど、誕生日の関係で同じ学年だった。
彼のことが好きだと自覚してからは、一緒にいるだけでドキドキが止まらなかったことを覚えている。
しかし、突然、恋は終わりを告げた。
彼はその秋に、引っ越して島を離れていってしまったから……。
彼への恋を自覚したのが夏ということで、彼との思い出の中で特に印象深いものは、ほとんど全て夏の出来事だ。
まだ5歳だったので、残っている記憶は断片的ではあるけど、彼との思い出は、深く深く私の心に刻みこまれている。
きっと一生忘れない。
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