シーサイド・ティアーズ~潮風は初恋を乗せて~
 やがて、私たちは帰ることにして、元来た道を引き返していく。
 帰り道は、いっそう暗くなっていた。
 真っ暗ではないものの、もう夜といっても過言ではないほどに。
 そんな中、山道を下っていく私たち。
 先を行くショウ君は、しょっちゅう振り返って私を見てくれている。
 多分、心配してくれてるんだろう。
 はぐれていないかどうか。
 私はその度に、微笑みをショウ君に返す。
 ショウ君は安心したかのような笑みを浮かべていた。

 行きの倍ほど時間がかかったけど、どうにか駐車場まで歩きついた私たち。
 体力に自信があるとはいえ、さっき泳いでからということもあり、私はへとへとだった。
 ショウ君はさすが、あまり疲れた様子もない。
 密かにそれが悔しくて、私も虚勢を張っていた。
「疲れただろ? あと一つの予定はキャンセルして、飯食って帰るか」
「まだ、大丈夫!」
 もちろん、かなり疲れているんだけど。
 もう一つの予定というのが、気になった。
「ほんとかよ。かなり疲れてるように見えるからな」
「あと一箇所なら、全然問題ないよ。また歩くの?」
「うん、少しだけ。どこに行くかというと、モール近くの臨海公園だよ。都会ほど高くはないけど、一応この島では最も高い建物である、漣渚タワーがそびえたってて、そこの最上階の夜景でもどうかと思って。レストランも併設されてるから、夜景を見ながら、飯を食うってことも可能だぞ」
「行きたい!」
 私は即答した。
 行きたくないはずがないじゃん。
「そこまで元気そうなら、大丈夫か。それなら、行くぞ」
 私たちは車に乗り込むと、臨海公園へと向かった。
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