シーサイド・ティアーズ~潮風は初恋を乗せて~
ショウ君はゆっくりと語り出す。
「会社を立ち上げて、ある程度の成功を成し遂げることができた俺は、それからずっと雫を探してきた。蓮藤たちにも、もちろん手伝ってもらいつつ、な。同い年ってことは、はっきりと分かってたから、もしあまりに発見が遅くなると、『雫にはもう旦那がいました』みたいなことが起こりかねないし、気が気じゃなかった。そんなことになれば、俺にとっては悲劇だからな」
大きく息を吐き出すショウ君。
私は静かに聞いていた。
「で、この島での知り合いたちの手伝いのお陰もあって、やっと雫を発見したわけだ。俺は嬉しかったよ。しかも、雫はまだ結婚しておらず、お見合い相手を探している状態だという。さらに、当時、俺の友達の友達だった烏丸って男は、雫の両親と知り合いだというから……俺はリアルに飛び上がって喜んだ。さっさと、烏丸と会ったのは言うまでもない。それで、烏丸は知ってのとおり、ああいう気のいい男だし、瞬く間に友達となったわけだな。そして、俺は運を天に任せつつ、烏丸に『お見合い相手を探している。知り合いで、同じような女はいないか? できれば紹介してほしい』と声をかけたんだ。すると、烏丸が3通、プロフィールっぽい紙切れを持ってきてくれて、俺は目を通した。今度はリアルに、椅子から転げ落ちたよ。その中に、雫がいたから。俺にはもう、天が与えた幸運にしか見えなかったな。もちろん、こういう展開を望んでたわけだけど、いきなりこんなにとんとん拍子で進むとは思ってなかったし」
嬉しそうなショウ君を見ていると、私も幸せな気持ちになる。
「しかし、ここで俺は重大なことに気づいた。もっとも、どうしてもっと早く気がつかなかったのかが謎だけど」
「重大なこと?」
私は聞き返す。
「それはな……。確かに、俺はこうして、焦がれるほどに雫のことが好きだけど……果たして雫は俺のことをどう思ってたのかってことだな。幼稚園当時、気持ちを伝えられないまま、離れ離れになっただろ。で、もし俺のことをすっかり忘れてるくらい、雫にとっての俺が『どうでもよい存在』なら、辛すぎるだろ、それ。『俺がショウだ。ほら、幼稚園のとき、覚えてるだろ?』って言って、『誰?』とか、『覚えてるけど、お前とお見合いとか嫌だ』なんて言われた日にゃ、心が折れかねん」
「私、そんな酷いこと言わないよ~」
「雫が優しい女だってことは、ずっと知ってたって。でも、当時の俺は疑心暗鬼だったからな。で、こっそり調査しようと考えた。もちろんだけど、『雫ちゃんが幼稚園時代、僕のことをどう思ってらしたのか知りたくて』みたいなことを、雫のご両親に尋ねるわけにはいかない。礼儀面からいっても無礼すぎるし、そもそもそれ以前に、そんなことをご存じない可能性がある。じゃあ、やっぱり、雫本人に聞くしかない。でも、どうやって? 直接聞けば、もしかしたら、さっきの冷たいコメントが返ってきて、立ち直れないほどのダメージを受けるかもしれない。俺は考えた。そして……『いいこと、閃いた! 蓮藤と入れ替わって、警戒心を抱かせないよう注意しつつ接近し、本心を聞こう』というわけだ」
「そうだったんだね……」
流れは、よくわかった。
「会社を立ち上げて、ある程度の成功を成し遂げることができた俺は、それからずっと雫を探してきた。蓮藤たちにも、もちろん手伝ってもらいつつ、な。同い年ってことは、はっきりと分かってたから、もしあまりに発見が遅くなると、『雫にはもう旦那がいました』みたいなことが起こりかねないし、気が気じゃなかった。そんなことになれば、俺にとっては悲劇だからな」
大きく息を吐き出すショウ君。
私は静かに聞いていた。
「で、この島での知り合いたちの手伝いのお陰もあって、やっと雫を発見したわけだ。俺は嬉しかったよ。しかも、雫はまだ結婚しておらず、お見合い相手を探している状態だという。さらに、当時、俺の友達の友達だった烏丸って男は、雫の両親と知り合いだというから……俺はリアルに飛び上がって喜んだ。さっさと、烏丸と会ったのは言うまでもない。それで、烏丸は知ってのとおり、ああいう気のいい男だし、瞬く間に友達となったわけだな。そして、俺は運を天に任せつつ、烏丸に『お見合い相手を探している。知り合いで、同じような女はいないか? できれば紹介してほしい』と声をかけたんだ。すると、烏丸が3通、プロフィールっぽい紙切れを持ってきてくれて、俺は目を通した。今度はリアルに、椅子から転げ落ちたよ。その中に、雫がいたから。俺にはもう、天が与えた幸運にしか見えなかったな。もちろん、こういう展開を望んでたわけだけど、いきなりこんなにとんとん拍子で進むとは思ってなかったし」
嬉しそうなショウ君を見ていると、私も幸せな気持ちになる。
「しかし、ここで俺は重大なことに気づいた。もっとも、どうしてもっと早く気がつかなかったのかが謎だけど」
「重大なこと?」
私は聞き返す。
「それはな……。確かに、俺はこうして、焦がれるほどに雫のことが好きだけど……果たして雫は俺のことをどう思ってたのかってことだな。幼稚園当時、気持ちを伝えられないまま、離れ離れになっただろ。で、もし俺のことをすっかり忘れてるくらい、雫にとっての俺が『どうでもよい存在』なら、辛すぎるだろ、それ。『俺がショウだ。ほら、幼稚園のとき、覚えてるだろ?』って言って、『誰?』とか、『覚えてるけど、お前とお見合いとか嫌だ』なんて言われた日にゃ、心が折れかねん」
「私、そんな酷いこと言わないよ~」
「雫が優しい女だってことは、ずっと知ってたって。でも、当時の俺は疑心暗鬼だったからな。で、こっそり調査しようと考えた。もちろんだけど、『雫ちゃんが幼稚園時代、僕のことをどう思ってらしたのか知りたくて』みたいなことを、雫のご両親に尋ねるわけにはいかない。礼儀面からいっても無礼すぎるし、そもそもそれ以前に、そんなことをご存じない可能性がある。じゃあ、やっぱり、雫本人に聞くしかない。でも、どうやって? 直接聞けば、もしかしたら、さっきの冷たいコメントが返ってきて、立ち直れないほどのダメージを受けるかもしれない。俺は考えた。そして……『いいこと、閃いた! 蓮藤と入れ替わって、警戒心を抱かせないよう注意しつつ接近し、本心を聞こう』というわけだ」
「そうだったんだね……」
流れは、よくわかった。