シーサイド・ティアーズ～潮風は初恋を乗せて～

「ああ、そうでした。ご確認なのですが……」
　運転席から蓮藤さんが、私たちに声をかける。
「烏丸様も今晩ご到着されますし、明日より早速お見合いを実施するということで、よろしいでしょうか？」
　烏丸冬嗣（からすま　とうじ）さんという方が、今回の世話人だったっけ。
　世話人とは、立会人のような役割の人で、桜ヶ丘さんと私の間に立ち、お見合いをコントロールしていく人のことだ。
　烏丸さんのお父さんが、私のお父さんと親友らしく、その縁で今回こういうお声がかかったみたい。
　烏丸さんは桜ヶ丘さんと親友同士だということを聞いている。
　ちなみに、私は烏丸さんとも会ったことがない。
　お父さんは、もちろん何度も会っているみたいだけど。
「ねぇ、烏丸さんって、どんな人？」
　お父さんに聞いてみる。
「年はちょうど雫と同じくらいで若いんだが、実直で信頼の置ける人柄だよ。父親譲りだね。だから、１００パーセント信頼できる。明日から、しっかりやってくれるはずだから、安心するといいさ」
　軽い笑みを浮かべて言うお父さん。
　お父さんとお母さんはあくまでも、付き添いだ。
　明日のお見合いに出席するのは、桜ヶ丘さんと私の他には、世話人の烏丸さんだけ。
　それでも、両親が付き添ってきてくれていることで、私の安心感は段違いだった。