シーサイド・ティアーズ～潮風は初恋を乗せて～

「それじゃ、俺たちは島での知り合いにあいさつ回りをしてくる。滞在日数は延びそうだけど、早めに済ませることは済ませておかないとな」
　しばらくおしゃべりをしたあと、お父さんが私に向かってそう言い、立ち上がった。
「え？　歩いて？」
「いや、運転手さんがさっきの車で連れていってくださる予定だ。雫はどうする？　お前は当時まだ小さすぎて、この島に知り合いは少ないだろうし、退屈かもしれないからな」
「それじゃ、私は勝手にこの別荘付近をぶらぶらしておくよ」
　両親についていってもいいんだけど、昨日まで仕事だったこともあり、疲れていたので、遠慮しておくことにした。
　全く知らない人に会いに行くのは、精神的にも疲れそうだし……。
　本当は礼儀的にも、両親の知り合いには、顔だけでもお見せしておいたほうがいいんだろうけれど。
「そうか、この島は安全だとは思うけど、くれぐれも気をつけるんだぞ。俺たちがここにいた当時より、車も増えていることだしな」
「そうよ、気をつけなさいよ。じゃあ、お父さん、行きましょうか」
　お父さんとお母さんはそう言うと部屋を出ていく。
　私はとりあえず別荘の周りを散歩でもすることにして、ポーチなどを取りに自分の部屋へと戻ることにした。