シーサイド・ティアーズ~潮風は初恋を乗せて~
 その先には、やや狭く感じられる庭があった。
 並んでいる花壇には、色とりどりの花が咲き誇っている。
 どこも綺麗にお手入れされているようだ。
 庭師さんがいらっしゃって、お手入れされているのかもしれない。
 壁際に数本植えられているヒマワリが、特に目に付いた。
 仲良く二本並んでいる大輪の花が、風に揺れている。
 そしてその隣には、朝顔が植えられていた。
 こちらも二本。
 この朝顔たちも、競争しているのかな。
 ショウ君と私の朝顔みたいに。
 伸び具合は同じくらいなので、恐らく同時期に植えられたのだろう。
 高く伸びた弦を見上げた先に、夏の青空が広がっていた。

 少し先に足を進めると、大きめの窓があったので、何気なく覗く私。
 カーテンの隙間から、室内がうかがえた。
 その部屋は図書室か書斎のようで、本棚がぎっしり並んでいる。
 そして―――。
 本棚の脇に立ち、熱心に本を読んでいる人の姿が見えた。
 蓮藤さんだ。
 本の黄色い表紙が、鮮やかだった。
 こちらに気づく様子もなく、本に熱中しているようだ。
 蓮藤さんは、先ほどまでと違い、手袋を外している。
 その手には大小さまざまな傷が見受けられた。
 もしかして、蓮藤さんがお庭のお手入れをされているのかな。
 秘書さんということで、てっきり事務的なお仕事ばかりをされているのかと思っていたけれど。
 そして、私の目は真剣な表情の蓮藤さんに注がれる。
 初めて見たときから思っていたことだけど、やっぱりかっこいい。
 本に集中するその姿は、実に絵になる様子だ。
 私はしばし、蓮藤さんの姿に見とれていた。
 すると、突然本を閉じ、本棚へと戻す蓮藤さん。
 ハッと我に返る私。
 いけない!
 覗き見なんてしてたら!
 私は慌ててその場から離れた。
< 18 / 113 >

この作品をシェア

pagetop