シーサイド・ティアーズ~潮風は初恋を乗せて~

再び別荘で

 里子と1時間ほどおしゃべりした後、蓮藤さんに連絡し、迎えに来てもらった私。
 別荘に帰り着くと、すでに両親は帰宅済みだった。
 それからしばらく、部屋で両親とおしゃべりをしていたところ、「すみません」という蓮藤さんの声と共にノックの音が。
 お父さんが応対に出てくれると、やはり蓮藤さんが立っていた。
「お邪魔して申し訳ございません。誠に申し上げにくいのですが……会長の到着が三日後になるようです」
 両親と私は同時に「ええっ?!」と声をあげた。
 そりゃ、そうなるよ……。
 三日後って……。
 幸い、今週いっぱい、有給休暇は取ってあるけど……。
「本当に申し訳ございません」
 深々と頭を下げる蓮藤さん。
「いえ、いいんですよ」
 お父さんが代表して、そう言ってくれた。
「ありがとうございます。それでですね、会長より『雫様を退屈させないように、お前が島を案内しておくように』とのご命令を受けまして。よろしければ、当方がしばし、雫様の案内役とならせていただきたいと思いまして」
「おお、それはありがたい! 雫、いいよな?」
 お父さんが私に聞く。
 私に異論のあるはずがなかった。
 明日、里子やオサム君と会うことぐらいしか予定らしい予定のない私にとっては、実にありがたい申し出だったから。
「はい、よろしくお願いします」
 私は立ち上がると、頭を下げた。
「こちらこそ、よろしくお願い申し上げます」
 綺麗なお辞儀を返してくれる蓮藤さん。
「明後日には、島の南端にあるメインストリートにて、夏祭りが開催される予定ですし、よろしければそちらもご案内いたしますよ」
 楽しそう!
 私は「是非お願いしますね」と答えた。
 そんなわけで、翌日からしばらく、蓮藤さんが島を案内してくれることとなった。
 密かに……すごく楽しみ。
 どんなところに連れてってくれるのかな。
 あさっての夏祭りが、特に待ち遠しい。
 夏祭りなんて、何年ぶりかなぁ。
 そう、夏祭りといえば……。
 ショウ君と過ごした夏祭りの想い出が、私の脳裏を駆け巡った。
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