シーサイド・ティアーズ~潮風は初恋を乗せて~
第2章 2日目

ヒマワリ畑

 翌朝、朝食後に早速、蓮藤さんが島を案内してくれることとなった。
 夕方5時から、里子たちと会うことはすでに伝えてあるけど、その時刻までの行動は全て蓮藤さんにお任せだ。
 どこへ連れてってくれるんだろう。
 私はすっかりピクニック気分で、ワクワクしていた。

「そうそう。会長のお申し付けにより、こんなものをご用意いたしております」
 にこやかな表情で、バッグから何かを取り出して、私に見せる蓮藤さん。
 それは、花火だった。
「わぁ~花火、大好きです! いかにも夏って感じですよね」
 私は大喜びだ。
 それと同時に、再び私は回想にふけることに。
 花火といえば……。

 ショウ君とすごした夏のある日、夏祭りの後のことだ。
 私たちは、お互いの両親と一緒に、花火をした。
 すごく楽しかったんだけど……。
 花火の中に、「ねずみ花火」というのがあって、これがショウ君と私にとってはトラウマとなった。
 火をつけた途端、暴れまわり、私たちに接近してきたからだ。
 そのとき、私は思いっきりショウ君に抱きついた。
 後から考えると、とても恥ずかしいけれど、そのときは冷静さを欠いていたから。
 年齢の割にがっしりとしていたショウ君の背中が、今も忘れられない。
 また、その後に楽しんだ線香花火も印象に残っている。
 ロケット花火や鮮やかな花火で遊んだ後だからこそ、その素朴な美しさに胸を打たれた。
 そして、どことなく物悲しいような、寂しいような、何とも言えない気持ちになったことを覚えている。
 思えば、ショウ君と一緒に過ごせた夏は、あれが最後だった。
 静かに消え行く線香花火の火のように、あの後、私の恋も消えてしまうなんて。


「どうかなさいましたか?」
 蓮藤さんが少し不思議そうに聞く。
 いけない、また思い出に浸っちゃってた。
「いえいえ、花火をするのってすごく久々だから、楽しみで」
「そうですか、それならよかったです」
 嬉しそうに笑う蓮藤さん。
 その手にある花火をじっくり見てみると、どうやら、ねずみ花火らしきものもあるようだ。
 あれだけは、私はパスさせてもらおっと。
「ではでは、出発しましょうか。まずは、ヒマワリ畑へ行きましょう。自転車をご用意いたしましたので、裏のガレージまでおいでいただけますか?」
 ヒマワリ畑って!
 もしかして……ショウ君との思い出の、あのヒマワリ畑?
 でも、あれから20年もの歳月が経過しているから、別の場所なのかな。
 とにかく、私は行く気満々だった。
「申し訳ございませんね、お車でお連れできず……。道中、車が通行できない箇所がございまして。でも、さほど距離はございませんので、数十分で着きますから。いかがでしょう?」
「ええ、もちろん、喜んで!」
 私は二つ返事でOKした。
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