シーサイド・ティアーズ~潮風は初恋を乗せて~
「では、早速……。この態度のままだと、恋人同士とは思えませんので。素になっても、よろしいでしょうか?」
「ええ、もちろん」
 素の蓮藤さんって、どんな感じなんだろう。
「あと、お名前を呼び捨てで呼ばせていただいたり、言葉遣いをフランクにさせていただいたり、そうしたことも問題ございませんか? もちろん、雫様も同じように接してくださって、何ら問題ございませんので。そもそも、これまでから、雫様のほうはそのように接してくださっていてもかまいませんでしたのに」
「問題ございません。では、私からも言葉遣いなどを改めますね」
「了解いたしました。では失敬して……」
 蓮藤さんは再び深々とお辞儀をした。
 そして、言葉を続ける。
「雫、これからもよろしくな。早速だが、明日の夏祭り、一緒にどう?」
「ええっ?!」
 驚きのあまり、今度は私がポカンとしていた。
 これが素の蓮藤さん……?
 ものすごく、マイペースで、そしてどんどん主導権を握っていくようなそんな感じ。
 でも……こういう蓮藤さんもいいな。
 ショウ君だって、こういう感じの人だったし。
 ……いけない!
 最低な私!
 蓮藤さんとのお付き合いが始まったのに、初恋相手のことを思い出すなんて!
「どうした? 雫は夏祭りとか、嫌い? それとも、俺の馴れ馴れしい態度が気に食わないか?」
「え? ううん、そんなことない。ただ、いきなりだから、戸惑ってて。そんな蓮藤さんも好きだよ。そして夏祭りも大好き」
「言ってなかったか。俺の名前は翔吾(しょうご)だ。そう呼べ」
「えええっ?!」
 翔吾君……ショウ君……?
 ま、まさか……!
 でも、ショウのつく名前なんて、相当数あるはずだし……偶然の一致だよね。
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