シーサイド・ティアーズ~潮風は初恋を乗せて~

再びショッピング

「じゃあ、どこへ行く? どこでもお前の好きなとこへ連れてってやるよ」
 車に乗り込むと、翔吾君が聞いてくれた。
「まずは、ショッピングをしたいな。水着が欲しいから」
「ん? 海で泳ぎたいのか? それなら別荘近くよりも、もっと西へ行ったところのほうが、見晴らしもいいよ。どうする?」
「じゃあ、そこへ」
「了解! まずはモールだな」
 翔吾君はそう言うと、車を発進させた。

 モール内の水着ショップに入った私たち。
「お、これなんか、いいんじゃないか?」
 早速、翔吾君が一つの水着を手に言ってきてくれた。
 それは、水色のビキニで、かなり面積が小さく見える。
「え~、何だか、布面積が小さい気が……。恥ずかしいし」
「なんでだよ。ビキニなんだし、このくらい普通だろ?」
 翔吾君はなぜか気に入ってるみたいだし……試着だけしてみよっかなという気になってくる。
「じゃあ、とりあえず、試着するね」
「おう!」
 翔吾君の双眼がキラキラと煌いている。
 私は素早く試着室へと入り、カーテンを閉めた。
 カーテンの向こうに翔吾君がいると思うと、ドキドキする私。
 やがて着替え終えたけど……思ったとおり、布面積が小さい……。
 翔吾君だけに見せるのならいいんだけど。
 他の人に、これを着ている所を見せたくないなぁ。
 でも、外で待つ翔吾君のため、仕方なく私はカーテンを開けた。
「お~、最高! 色合いも、よく雫に似合ってるじゃん」
 翔吾君の熱い視線が、こそばゆい。
 でも、喜んでもらえているようなので、「これでもいいかな」と思う私。
 すごく恥ずかしいけれど、ここまで喜んでくれるなら。
「じゃあ、これにしよっか」
 私が言うと、彼は激しく首肯した。
「うんうん、一つ目はそれね」
「え? 一つ目?」
「次はこれ!」
 彼が次に見せてきたのは、ピンクのビキニだった。
 私、ビキニを着たのって、これが初めてなんだけど。
 それなのに、連続して着るって……。
「え~、またビキニ?」
「いいじゃん。ビキニじゃないと、俺がやだ。ビキニしか買わないから」
 断固とした様子で言い切る翔吾君。
「恥ずかしいし……」
「だったら、部屋で二人っきりのときだけ、着ればいい。俺が見たいから」
 真剣なまなざしで、そんなこと言わないでほしいな……。
 こんなことを言われると、断れなかった。
「まぁまぁ、とりあえず、試着よろしく!」
 半ば強引に水着を押し付けて、翔吾君はカーテンを閉める。
 うう、強引だ。
 でも、嫌な気は全然しない。
 翔吾君の視線に、優しさと愛情を感じたから。
 そして、素直に「見たい」と言ってもらうことは、普通に嬉しかった。
 私にとって問題だったのはただ一つ、恥ずかしさだけだ。
 それも、他の人に見られることを考えた時だけの。
 翔吾君になら、恥ずかしさはあっても、同時に嬉しさもあって。
 ずっと見られていても平気……というか、見られていたい。
 こんなことを考えている自分自身に対しても、羞恥心が湧いてくるけど。
 ピンクの水着に着替えると、私はまたカーテンを開けた。
「お~、可愛い!」
 手放しで褒めてくれる翔吾君。
 私はすごく嬉しかった。
「ありがとう。じゃ、じゃあ、これも買ってもいい?」
「当たり前。何着でも買うぞ」
「でも、そんなの申し訳ないし」
「俺が買いたいから! 異論は認めない」
 強く言い切る翔吾君。
 私はたじたじとなってしまう。
「じゃ、じゃあ、よろしくね。えっと、水着はこのくらいで」
「そうだな、水着選びの続きはまた今度にしよう。じゃあ、次は下着だな!」
「ええええ?!」
 それはさすがに……恥ずかしい!
「いやいや、別に試着はしなくていいって。ただ買うだけ。ま、後で二人っきりのとき、じっくり見せてもらうけどな」
 そ、それなら、いいかな。
 下着の場合は、翔吾君以外の男性には見せることはないはずだし。
「じゃ、じゃあ、いいよ」
「よし、あっちの店だ。行くぞ」
 俺について来い、とばかりに言う翔吾君。
 私は黙ってついていった。
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