シーサイド・ティアーズ~潮風は初恋を乗せて~
やがて、輪投げの出店にて立ち止まる私。
ショウ君との想い出が蘇ってくる。
「お? 何か欲しい景品でもあるのか?」
翔吾君が聞いてくれた。
景品に目を移すと……三日月ウサギではなく、キツネだけど、ぬいぐるみがあるのが見える。
「んーっと、あのぬいぐるみなんだけど……。でも、それには、あんなに遠くの棒に輪を引っ掛けないといけないし、難しそうだから、別に気にしないで」
「何をおっしゃる雫様。俺がそんな煽りを受けて、のこのこ引き下がるとでも?」
悪戯っぽく笑って翔吾君は言う。
何だか、このノリも……想い出の中のショウ君とだぶって見えた。
別人……なんだよね?
「必ず取ってやるから、見てろって。俺、この輪投げ、得意なんだからな」
そう言いつつ、お店のおじさんから輪を3つ受け取る翔吾君。
輪を握るその左手の甲に目をやったとき、私はハッとした。
そこに、直径1センチほどもある、白くて楕円形の傷があったから。
ショウ君が怪我をしたのが、どちらの手だったのかは覚えていない。
だけど……翔吾君のこの大きな古傷……こういう傷を残すほどの重傷だったのは確かだ。
まさか……まさか……。
私の心の中をクエスチョンマークが駆け巡る。
そんな私の様子に気づかず、集中力を高めている様子の翔吾君。
やがて、翔吾君は輪を放った。
しかし、惜しくも棒に当たって、弾かれてしまい失敗に。
「ちっ。もうちょっとだったな……。だけど、感覚は掴んだぞ。次こそ」
翔吾君は慎重な様子で、しかし勢いよく、輪を投げる。
その輪は美しい軌道を描き、見事に棒へと収まった。
すごい!
「ほら、見たか!」
翔吾君は私に向かって自慢げに言いつつ、お店のおじさんからぬいぐるみを受け取る。
「すごい!」
「だろ? このぬいぐるみは、帰ってから渡すよ。荷物になるだろ。さぁ、他に何か欲しいものはないか? 輪があと1つ残ってるからな」
「じゃ、じゃあ……お言葉に甘えて。あそこにある、可愛いハンカチを」
次々と欲しいものを言っちゃって、遠慮なさすぎかな。
でも、そうして率直に言われたほうが、翔吾君も喜んでくれているように見えるから……。
再び輪を構える翔吾君。
その真剣な眼差しから、私は目をそらすことができなかった。
遠い想い出の中のショウ君が、同じく輪を構えている気がする。
そしてその姿が、翔吾君とぴったり重なっているようにも見えて……。
そういえば……。
今、思い返してみれば、他にもいっぱいいっぱい、ショウ君と翔吾君には共通点があった気がする。
ヒマワリ畑で、ヒマワリの種を食べたあの行動もそう。
ただ、怖いのが……これが全て偶然の一致だった場合だ。
本当に、本当に大丈夫かな。
もし、違っていたら、相当気を悪くさせちゃうことは間違いないように思える。
そんな迷いの中、立ち尽くす私を尻目に、翔吾君は綺麗なフォームで輪を放った。
その輪は、狙い済ましたかのように、目指す棒に引っかかる。
こうして、あっさりとハンカチを獲得した翔吾君は、すぐに私に渡してくれた。
「ほら、これ」
「ありがとう。さすがだね、翔吾君。すごい……」
私はそう言って受け取る。
心に渦巻く迷いに、答えを与えられぬまま。
「それほどでもあるかな~」
得意げな翔吾君。
こうして気安くおしゃべりをしてしまうと、聞きだす勇気は薄れていく。
この心地よい空気を壊したくなくて。
ショウ君との想い出が蘇ってくる。
「お? 何か欲しい景品でもあるのか?」
翔吾君が聞いてくれた。
景品に目を移すと……三日月ウサギではなく、キツネだけど、ぬいぐるみがあるのが見える。
「んーっと、あのぬいぐるみなんだけど……。でも、それには、あんなに遠くの棒に輪を引っ掛けないといけないし、難しそうだから、別に気にしないで」
「何をおっしゃる雫様。俺がそんな煽りを受けて、のこのこ引き下がるとでも?」
悪戯っぽく笑って翔吾君は言う。
何だか、このノリも……想い出の中のショウ君とだぶって見えた。
別人……なんだよね?
「必ず取ってやるから、見てろって。俺、この輪投げ、得意なんだからな」
そう言いつつ、お店のおじさんから輪を3つ受け取る翔吾君。
輪を握るその左手の甲に目をやったとき、私はハッとした。
そこに、直径1センチほどもある、白くて楕円形の傷があったから。
ショウ君が怪我をしたのが、どちらの手だったのかは覚えていない。
だけど……翔吾君のこの大きな古傷……こういう傷を残すほどの重傷だったのは確かだ。
まさか……まさか……。
私の心の中をクエスチョンマークが駆け巡る。
そんな私の様子に気づかず、集中力を高めている様子の翔吾君。
やがて、翔吾君は輪を放った。
しかし、惜しくも棒に当たって、弾かれてしまい失敗に。
「ちっ。もうちょっとだったな……。だけど、感覚は掴んだぞ。次こそ」
翔吾君は慎重な様子で、しかし勢いよく、輪を投げる。
その輪は美しい軌道を描き、見事に棒へと収まった。
すごい!
「ほら、見たか!」
翔吾君は私に向かって自慢げに言いつつ、お店のおじさんからぬいぐるみを受け取る。
「すごい!」
「だろ? このぬいぐるみは、帰ってから渡すよ。荷物になるだろ。さぁ、他に何か欲しいものはないか? 輪があと1つ残ってるからな」
「じゃ、じゃあ……お言葉に甘えて。あそこにある、可愛いハンカチを」
次々と欲しいものを言っちゃって、遠慮なさすぎかな。
でも、そうして率直に言われたほうが、翔吾君も喜んでくれているように見えるから……。
再び輪を構える翔吾君。
その真剣な眼差しから、私は目をそらすことができなかった。
遠い想い出の中のショウ君が、同じく輪を構えている気がする。
そしてその姿が、翔吾君とぴったり重なっているようにも見えて……。
そういえば……。
今、思い返してみれば、他にもいっぱいいっぱい、ショウ君と翔吾君には共通点があった気がする。
ヒマワリ畑で、ヒマワリの種を食べたあの行動もそう。
ただ、怖いのが……これが全て偶然の一致だった場合だ。
本当に、本当に大丈夫かな。
もし、違っていたら、相当気を悪くさせちゃうことは間違いないように思える。
そんな迷いの中、立ち尽くす私を尻目に、翔吾君は綺麗なフォームで輪を放った。
その輪は、狙い済ましたかのように、目指す棒に引っかかる。
こうして、あっさりとハンカチを獲得した翔吾君は、すぐに私に渡してくれた。
「ほら、これ」
「ありがとう。さすがだね、翔吾君。すごい……」
私はそう言って受け取る。
心に渦巻く迷いに、答えを与えられぬまま。
「それほどでもあるかな~」
得意げな翔吾君。
こうして気安くおしゃべりをしてしまうと、聞きだす勇気は薄れていく。
この心地よい空気を壊したくなくて。