シーサイド・ティアーズ~潮風は初恋を乗せて~
「あれ~? 先客ぅ?!」
聞きなれた声が後ろからする。
この声……まさか、里子?!
「げ、嘘だろ。この場所を知ってる人間は限られてるはず……」
不可解そうな顔でそう言うと、翔吾君も私と同じく振り向いた。
そこにいたのは―――。
やはり、里子だった!
里子と……オサム君!
そしてもう一人の見知らぬ女性。
その人はきっと、里子の友達だろう。
そんなことを言ってたっけ。
「おぉ! 雫じゃん! あ、雫の彼氏さんですよね? 初めまして~。私、雫の大大大親友の榎田里子といいます。よろしく~」
くだけた様子で挨拶する里子。
「雫ちゃん、ちぃーっす。どうもっす、常磐理っす」
「初めまして。花村奈美枝です。よろしくお願いします」
後ろの二人も口々に挨拶してくれたので、私も挨拶を返した。
「初めまして、蓮藤翔吾と申します。皆さん、よろしくお願いしますね」
翔吾君もそう言うと、また綺麗なお辞儀を見せる。
私は心の中で、「里子とオサム君、翔吾君の前で余計なこと言わないでね。せっかくいい雰囲気なんだから」と祈っていた。
「お邪魔でしたよね、すみません。ここで花火を見ようと思いまして」
申し訳なさそうに言う里子。
里子には失礼だけど、意外と礼儀正しい。
「いえいえ、お気遣いなく。別に我々の特等席というわけでもございませんし」
ここで、怪訝な表情になる里子。
オサム君と花村さんは、いささか居心地の悪そうに黙ったままだ。
翔吾君と私の邪魔をしてしまったと思って、気にしてくれてるのかな。
「あの……。どこかでお会いしたことありませんか?」
里子が難しい表情のまま、翔吾君に尋ねる。
「いえ、ちょっと分からないです、申し訳ございません。ただ、仕事でたびたび、こちらの島まで来ておりますので、すれ違っているかもしれませんね」
曖昧な笑顔を見せて、顔の前で手を振る翔吾君。
そのとき、里子が素っ頓狂な叫び声を上げた。
「あああっ!!」
他の四人は思わず、ビクッとなる。
「おい、里子。脅かすなよ」
オサム君がたしなめた。
「その傷……。その手の甲の傷……」
放心したかのような表情で、里子は翔吾君の左手を指差す。
翔吾君は、なぜか慌てた様子で、手を背中に回して隠した。
しばしの気詰まりな沈黙。
空に上がる花火の音だけが、響いていた。
そんな沈黙を破ったのはオサム君だ。
「おい、人の傷を指差して叫ぶとか、いくらなんでも失礼だろ。別に手に傷があったっていいだろうが」
オサム君のほうを見向きもせず、それに答えることもしない里子。
翔吾君のほうを向いたまま、静かに言った。
「ねぇ、ショウ君でしょ?」
ドドンと、花火が一つ上がった。
聞きなれた声が後ろからする。
この声……まさか、里子?!
「げ、嘘だろ。この場所を知ってる人間は限られてるはず……」
不可解そうな顔でそう言うと、翔吾君も私と同じく振り向いた。
そこにいたのは―――。
やはり、里子だった!
里子と……オサム君!
そしてもう一人の見知らぬ女性。
その人はきっと、里子の友達だろう。
そんなことを言ってたっけ。
「おぉ! 雫じゃん! あ、雫の彼氏さんですよね? 初めまして~。私、雫の大大大親友の榎田里子といいます。よろしく~」
くだけた様子で挨拶する里子。
「雫ちゃん、ちぃーっす。どうもっす、常磐理っす」
「初めまして。花村奈美枝です。よろしくお願いします」
後ろの二人も口々に挨拶してくれたので、私も挨拶を返した。
「初めまして、蓮藤翔吾と申します。皆さん、よろしくお願いしますね」
翔吾君もそう言うと、また綺麗なお辞儀を見せる。
私は心の中で、「里子とオサム君、翔吾君の前で余計なこと言わないでね。せっかくいい雰囲気なんだから」と祈っていた。
「お邪魔でしたよね、すみません。ここで花火を見ようと思いまして」
申し訳なさそうに言う里子。
里子には失礼だけど、意外と礼儀正しい。
「いえいえ、お気遣いなく。別に我々の特等席というわけでもございませんし」
ここで、怪訝な表情になる里子。
オサム君と花村さんは、いささか居心地の悪そうに黙ったままだ。
翔吾君と私の邪魔をしてしまったと思って、気にしてくれてるのかな。
「あの……。どこかでお会いしたことありませんか?」
里子が難しい表情のまま、翔吾君に尋ねる。
「いえ、ちょっと分からないです、申し訳ございません。ただ、仕事でたびたび、こちらの島まで来ておりますので、すれ違っているかもしれませんね」
曖昧な笑顔を見せて、顔の前で手を振る翔吾君。
そのとき、里子が素っ頓狂な叫び声を上げた。
「あああっ!!」
他の四人は思わず、ビクッとなる。
「おい、里子。脅かすなよ」
オサム君がたしなめた。
「その傷……。その手の甲の傷……」
放心したかのような表情で、里子は翔吾君の左手を指差す。
翔吾君は、なぜか慌てた様子で、手を背中に回して隠した。
しばしの気詰まりな沈黙。
空に上がる花火の音だけが、響いていた。
そんな沈黙を破ったのはオサム君だ。
「おい、人の傷を指差して叫ぶとか、いくらなんでも失礼だろ。別に手に傷があったっていいだろうが」
オサム君のほうを見向きもせず、それに答えることもしない里子。
翔吾君のほうを向いたまま、静かに言った。
「ねぇ、ショウ君でしょ?」
ドドンと、花火が一つ上がった。