シーサイド・ティアーズ~潮風は初恋を乗せて~
夜の海で
しばらく夜のドライブを楽しんだ私たちは、ショウ君の提案で、別荘近くの海へと立ち寄った。
夜だと、海もかなり印象が違う。
暗く静かな海も、なかなかいいものだなと思った。
「な、夜の海も良いもんだろ? 釣具があれば、釣りもできたのにな。持ってきてないや」
ショウ君が言う。
釣りにはあまり興味がないんだけど、ショウ君が釣り好きなら、色々教えてもらおうかな。
ふと、冷たい潮風が吹きぬけた。
「そうだね。風も気持ちいい」
「落ち着くよな」
そう言って、ショウ君は伸びをする。
私の心には幸せが満ち溢れていた。
なのに……どことなく、切ないような、寂しいような気持ちが私を襲う。
きっと、さっきショウ君が言ってた「打ち明けられない事情」のせいだ。
どうしても……早く知りたい私。
不安で不安で。
でも、そのことを執拗に話題にすると、ショウ君を困らせる可能性大なので、私はしたくなかった。
そして、私は想像してみる。
嫌な想像ばかり、頭に浮かぶけど……。
そのうちの一つを、ショウ君に確認してみた。
「ねぇ、まさかとは思うけど……ショウ君には奥様とかいないよね? そこは本当だよね? ごめんね、何度も同じことを聞いて」
「いいって。心配かけてるの、こっちだからな。安心しろって、もちろん今はいない」
その言葉の「今は」の部分が、妙に気になる私。
気にしすぎかな……。
でも、もし過去に奥様がいらっしゃったとしても、今はいないってことは、私が付き合っていても何の問題もないことになるし、どちらにせよ気にしなくていいのかも。
「ん? 答えが気に入らないか?」
私の顔を覗き込むショウ君。
「そ、そんなことないよ」
「モヤモヤしてるのは分かる。でも、もう数日間だけ待ってくれ。清算しないといけないことがあってな……」
「清算?」
「うん、まぁ、色々と……な」
またしても歯切れが悪いショウ君。
いったい、何があるの……。
私は気になって気になって、しょうがなかった。
でも、問いただすわけにもいかない。
「うん、心配かけてるみたいだし……決めた。期限、あさってにしよう。あさってには、色々と清算を済ませ、全ての事情を話せるから。今日はもうすぐ終わるから、正味2日間だけ待ってくれ。それ以上は求めないから」
こう言われると、私にはこれ以上、事情について聞きだすことができなかった。
でも……。
2日後にはすでにお見合いは始まってるはず。
その辺のことに、私は話題を移した。
「桜ヶ丘さん、明日には到着される予定だったよね?」
「うん、そうだな。何時になるかまでは分からないけど」
「そうなると……お見合いが開始だね……。私たち、大丈夫かな……」
「心配するなって」
そう言って、優しく髪を撫でてくれるショウ君。
「確かに、俺は会長に恩義を感じているから、裏切れない。だから、今すぐ駆け落ちしたり、お見合いを中止したりはできない。だけど、今回のお見合いが破談になれば、その後ほとぼりが冷めてから、俺たちが付き合うことは俺たちの勝手じゃないかと思っている。会長もその辺はきっと理解してくれるはず。俺たちが、幼稚園時代からの知り合いだと伝えれば、なおさら。会長はそんなに器が狭い人じゃないからな」
桜ヶ丘さんのこと、本当に信頼してるんだな……。
そして、桜ヶ丘さんからも、ショウ君はきっと信頼されている。
その信頼を裏切りたくない気持ちは、すごく理解できた。
「うん、分かった……。本当に心配になっちゃってて。だけど、もう聞かないことにするね。ショウ君も辛いんだって分かってるから」
「ありがとな。だけど、ほんとに何も心配要らない。全て上手くいくから」
そう言って、私を抱き寄せてくれるショウ君。
「私たちの両親は……何て言うかな……。ここ数日、こうして一緒に出かけているショウ君と、そんな風に恋人関係になることを……」
「そこも心配要らないって。大事なのは、俺たちお互いの気持ち。そうじゃない? それに……」
「それに?」
「もし、どうしても一緒になれない事情が出てくるようなら……駆け落ちしよう。そのときは、俺も腹をくくるよ。何よりも、誰よりも、雫が大切。このことだけは、永遠に変わらないから」
私は驚きと歓びで、声が詰まった。
ショウ君……。
そこまで私のことを……。
「私も……同じ気持ちだよ。ショウ君のこと、大好き………くしゅん!」
せっかくいい雰囲気なのに、くしゃみで台無しにしてしまう私……。
はぁ……。
「だいぶ風が冷たいな。そろそろ帰るか。さっき、コックには連絡を入れておいたから、きっとすぐに夕食を出してくれるはず」
そう言って、ショウ君は立ち上がり、そして私に向かって手を伸ばしてくれた。
私はその手を取って、立ち上がる。
そして、私たちは夜の浜辺を後にした。
夜だと、海もかなり印象が違う。
暗く静かな海も、なかなかいいものだなと思った。
「な、夜の海も良いもんだろ? 釣具があれば、釣りもできたのにな。持ってきてないや」
ショウ君が言う。
釣りにはあまり興味がないんだけど、ショウ君が釣り好きなら、色々教えてもらおうかな。
ふと、冷たい潮風が吹きぬけた。
「そうだね。風も気持ちいい」
「落ち着くよな」
そう言って、ショウ君は伸びをする。
私の心には幸せが満ち溢れていた。
なのに……どことなく、切ないような、寂しいような気持ちが私を襲う。
きっと、さっきショウ君が言ってた「打ち明けられない事情」のせいだ。
どうしても……早く知りたい私。
不安で不安で。
でも、そのことを執拗に話題にすると、ショウ君を困らせる可能性大なので、私はしたくなかった。
そして、私は想像してみる。
嫌な想像ばかり、頭に浮かぶけど……。
そのうちの一つを、ショウ君に確認してみた。
「ねぇ、まさかとは思うけど……ショウ君には奥様とかいないよね? そこは本当だよね? ごめんね、何度も同じことを聞いて」
「いいって。心配かけてるの、こっちだからな。安心しろって、もちろん今はいない」
その言葉の「今は」の部分が、妙に気になる私。
気にしすぎかな……。
でも、もし過去に奥様がいらっしゃったとしても、今はいないってことは、私が付き合っていても何の問題もないことになるし、どちらにせよ気にしなくていいのかも。
「ん? 答えが気に入らないか?」
私の顔を覗き込むショウ君。
「そ、そんなことないよ」
「モヤモヤしてるのは分かる。でも、もう数日間だけ待ってくれ。清算しないといけないことがあってな……」
「清算?」
「うん、まぁ、色々と……な」
またしても歯切れが悪いショウ君。
いったい、何があるの……。
私は気になって気になって、しょうがなかった。
でも、問いただすわけにもいかない。
「うん、心配かけてるみたいだし……決めた。期限、あさってにしよう。あさってには、色々と清算を済ませ、全ての事情を話せるから。今日はもうすぐ終わるから、正味2日間だけ待ってくれ。それ以上は求めないから」
こう言われると、私にはこれ以上、事情について聞きだすことができなかった。
でも……。
2日後にはすでにお見合いは始まってるはず。
その辺のことに、私は話題を移した。
「桜ヶ丘さん、明日には到着される予定だったよね?」
「うん、そうだな。何時になるかまでは分からないけど」
「そうなると……お見合いが開始だね……。私たち、大丈夫かな……」
「心配するなって」
そう言って、優しく髪を撫でてくれるショウ君。
「確かに、俺は会長に恩義を感じているから、裏切れない。だから、今すぐ駆け落ちしたり、お見合いを中止したりはできない。だけど、今回のお見合いが破談になれば、その後ほとぼりが冷めてから、俺たちが付き合うことは俺たちの勝手じゃないかと思っている。会長もその辺はきっと理解してくれるはず。俺たちが、幼稚園時代からの知り合いだと伝えれば、なおさら。会長はそんなに器が狭い人じゃないからな」
桜ヶ丘さんのこと、本当に信頼してるんだな……。
そして、桜ヶ丘さんからも、ショウ君はきっと信頼されている。
その信頼を裏切りたくない気持ちは、すごく理解できた。
「うん、分かった……。本当に心配になっちゃってて。だけど、もう聞かないことにするね。ショウ君も辛いんだって分かってるから」
「ありがとな。だけど、ほんとに何も心配要らない。全て上手くいくから」
そう言って、私を抱き寄せてくれるショウ君。
「私たちの両親は……何て言うかな……。ここ数日、こうして一緒に出かけているショウ君と、そんな風に恋人関係になることを……」
「そこも心配要らないって。大事なのは、俺たちお互いの気持ち。そうじゃない? それに……」
「それに?」
「もし、どうしても一緒になれない事情が出てくるようなら……駆け落ちしよう。そのときは、俺も腹をくくるよ。何よりも、誰よりも、雫が大切。このことだけは、永遠に変わらないから」
私は驚きと歓びで、声が詰まった。
ショウ君……。
そこまで私のことを……。
「私も……同じ気持ちだよ。ショウ君のこと、大好き………くしゅん!」
せっかくいい雰囲気なのに、くしゃみで台無しにしてしまう私……。
はぁ……。
「だいぶ風が冷たいな。そろそろ帰るか。さっき、コックには連絡を入れておいたから、きっとすぐに夕食を出してくれるはず」
そう言って、ショウ君は立ち上がり、そして私に向かって手を伸ばしてくれた。
私はその手を取って、立ち上がる。
そして、私たちは夜の浜辺を後にした。