シーサイド・ティアーズ~潮風は初恋を乗せて~
「わざわざ、すまん。だけど、約束したから、仕方ないだろ」
「うん、それに、せっかく買ってもらったんだもん。少しでも喜んでもらいたいし、私も見てもらいたい」
「よーし、これでもかってほど、凝視するぞ」
「え~」
 口ではそう言うも、悪い気はしない私。
 すぐさま、服を脱ぎ始める。
 相変わらず、視線がこそばゆいけど。
 とりあえず、いったん全て脱ぐことにした。
 すると、裸になった途端、近づいてきてギュッと抱きしめてくれるショウ君。
「見てたら、我慢できなくなった」
「我慢しなくてもいいよ。ショウ君のこと好きだから、何されても平気」
 私は本心からそう言った。
 うん、ショウ君になら、どんなことをされても許せる。
「気持ちは嬉しい。しかし、今はある程度、我慢しないと……」
「どうして?」
「全てを清算してからだ」
 また、それだ……。
 いったい、何を清算するんだろう。
 まさか、「内縁の妻」とか「前妻さん」とかがいるわけじゃ……?
 考えがどんどん悪い方向へ行ってしまう。
 ただ、どんな事情があるにせよ、ショウ君への気持ちは絶対に変わらないけど。
 そして、何年でも待てるから。
 ここまで、「再会できるかどうかすら分からない」という状態にも関わらず、あてのない希望を抱いたまま、20年間も待ってこられたんだし。
 もし、「2年待ってくれ」と言われたとしても、私にとっては短い時間だ。
 何の問題もない。
「あさってには、全ての事情を話してくれる……んだよね?」
「ああ、もちろん」
「じゃあ、あさって……。いっぱい……してね」
「おう」
 ショウ君は、「何を?」と聞くようなマネはしなかった。
 全て分かってくれたみたい。
 抱きしめられている私は、ドキドキと興奮がピークで、「もう今すぐにでも、何かされてもかまわない。むしろ、してほしい」といった心境だったけど。
 あさってと言うと……お見合い開始の日だ。
 桜ヶ丘さんに対する礼儀という面で、あまり大胆すぎることはできない可能性はある。
 それは仕方ないかな……。
 でも、それでも、早くその「事情」を全て知りたい。
 そして、全てが丸く収まりますように。
 私は切に願った。
< 74 / 113 >

この作品をシェア

pagetop