シーサイド・ティアーズ~潮風は初恋を乗せて~
 プラネタリウムの建物の角を曲がると、自販機とショウ君の姿が見えた。
 でも、それだけじゃなくて……。
 あの人……誰?
 自販機の前で、ショウ君が見知らぬ女性と話をしているようだった。
 笑顔を見せながら……。
 その女性は、遠目からでも、すごく美人なのが分かる。
 胸がズキッと痛んだ。
 見てられないよ……。
 でも目が離せない。
 すると、まもなく、二人はお互いに手を振り合って、離れた。
 その女性はこちらへ歩いてくるようだ。
 私は慌ててベンチへと戻った。

 しばらくして、ショウ君が戻ってくるのに気づいた。
 私……平静を保てるかな。
 心の中は、嵐が吹き荒れていた。
「遅くなってごめんな。はい、ココア」
 隣に腰掛けながら、缶を手渡してくれるショウ君。
「ありがとう……」と言って、私は受け取った。
「ん? どうした?」
「え?」
「顔色が悪い気がする。大丈夫か?」
 心配そうなショウ君。
 私は我慢できず、打ち明けることにした。
 心の中に、モヤモヤを残していたくなくて。
「その……ごめん。遅いから、ちょっと様子を見に行ったの。あの女の人、誰?」
「なんだ、そんなことを気にしてたのか。ちょっとした知り合い。友達ってほどじゃないし、連絡先も知らねーよ。安心しろって、俺にはお前だけだから」
 いつもなら嬉しいこの言葉も、不安に包まれている私にとっては根本的な慰めにはなっていなかった。
「ねぇ、昨日から言ってる『清算』って何のことなの? それだけ、教えて」
 ショウ君の表情が曇った。
「明日には言うって、何度も言ってるだろ」
「どうして、今じゃいけないの?」
「そんなにマジにならないでくれ。100パーセント、丸く収まるから。はっきり言うと、今晩には全てカタをつける。絶対に、悪い結果にはならない」
「でも……でも……不安でどうしようもないの!」
 私は泣き出してしまった。
「さっきの女の人……。その清算に関係ある?」
「は? あるわけないだろ。雫、まさか俺とあいつが付き合ってるとか、そういう疑いを持ってるのか?」
 ちょっとイライラした様子のショウ君。
「そんな意味じゃないよ! でも、不安になるの、しょうがないでしょ」
 私はベンチを飛び出した。
「あ、待て!」
 全速力でショウ君から逃げる私。
 隠し事をされていることが、悲しくて辛くて……。
 本当はショウ君と、ずっと一緒にいたいのに、そんな気持ちを抑えつけてまで私は逃げ出した。
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