シーサイド・ティアーズ~潮風は初恋を乗せて~
 蓮藤さんは道路脇に駐車してある大きな白い車の横に立つと、「どうぞ、こちらへ」と言った。

 それにしても大きな車だ。
 キャンピングカーっていうんだっけ。
 テレビで見たことがある。

 両親と私が乗り込むのを確認してから、蓮藤さんは運転席に乗り込んでシートベルトを締めた。
「別荘まで15分もかからないかと思いますので、到着まで今しばらくお待ちくださいね」
 そして蓮藤さんは、車を発進させた。

 別荘へ向けて走る車の窓から、私は外を眺めていたけど、景色に見覚えはなかった。
 20年間で景色が変化してしまったのか、私が覚えていないだけなのか………多分、どっちも理由としてあり得るかと思う。
 ただ、20年前の穏やかでのどかな記憶そのままの印象だったので、なぜだか少し安心した。
 私たちの車が走っている細い道は舗装されているけど、周りに背の高い建物の姿はなく、畑や空き地もそこかしこに見受けられる。

 5分ほど経ったところで、私たちの車は信号待ちすることになった。
 その時、交差点の向こうで風に揺れているヒマワリに、私は目を奪われた。
 私は、この花が大好きだ。
 花びらの鮮やかな黄色、緑色をした長い茎、茶色っぽい部分―――。
 ショウ君の声が聞こえた気がした。

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