シーサイド・ティアーズ~潮風は初恋を乗せて~

 どのくらい走っただろう。
 ショウ君は追ってきてないみたい。
 私、かなり走力にも自信があるから。
 土地勘がないので、今どこにいるのかは、はっきり分からない。
 海沿いであるのは確かだけど。
 細い道路がずっと続いており、すぐそばには海があった。
 波音は、静かに重く感じられる。
 そのとき、スマホの着信音が聞こえた。
 取り出して見てみると、ショウ君からだ。
 でも……私は出ない。
 着信音だけが響いていく。
 ………。
 出ないと心に決めたはずなのに、つい出てしまう私。
 ショウ君からの電話……無視できない。
「もしもし、雫! 今どこにいる?!」
 いつもとはうって変わって、ショウ君は焦った声色だ。
「土地勘がないから、分からない。ねぇ、さっきの話だけど……。今すぐ、全てを話して」
「………」
 ショウ君は黙ってしまった。
 やがて、ぽつりと、「そんなことよりも、今どこにいるのかを……」と言うショウ君。
「全てを話して! じゃないと……やだ!」
「でも……」
「お願い、話して。決心が出来てから、電話して」
 そう言って、私は通話を切った。
 どうして、そこまでして隠すんだろう。
 私は怒ってたんだけど……同時に悲しかった。
 ショウ君のこと大好きで……ほんとは、こんなことしたくないのに。
 これで嫌われちゃったらって思うと、それも怖い。
 どうしたらいいの……。
 でも、こんな不安を抱えたまま、このあと一緒に過ごすのは耐えられない気がした。
 やっぱり、すぐに話してほしい。
 それとも、話せないようなことなの?
 私の不安は尽きないままだ。
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