シーサイド・ティアーズ~潮風は初恋を乗せて~

烏丸さんの話

「お待たせいたしました」
 モール出口まで、車で迎えに来てくれた烏丸さんが声をかけてくれる。
 どうにか、私は泣き止むことができていた。
「お手数をおかけして、本当に申し訳ございません」
「いえいえ、とんでもない。さぁ、こんなところで立ち話も何ですし、とりあえず別荘まで戻りましょう」
 後部座席のドアを開けてくれる烏丸さん。
 私は会釈をしてから乗り込んだ。
 車内では、とりとめのない会話に終始した私たち。
 どこまで事情を把握しているのか分からないけど、烏丸さんは気を遣ってくれているように思えた。
 それほど時間もかからずに、私たちは別荘に到着し、屋内へと入る。
 烏丸さんは、「とりあえず、この奥の部屋へお越しください」と言って、1階の奥へ案内してくれた。
 洗面所の奥の部屋……?
 その部屋へ入るのは初めてだった。
< 92 / 113 >

この作品をシェア

pagetop