今宵も、月と踊る
まもなく、夜が明ける。
月が輝いていた空が、青とオレンジの色彩に染まっていく。雀が朝を告げるように鳴いていた。
今日からまた変哲のないプチ軟禁生活が始まる。
昨日と決定的に違うのは、私の“カグヤ憑き”に対する認識ががらりと変わったという点だ。
私は、志信くんのことが……計り知れない力を持った“カグヤ憑き”のことが、少し怖くなっていた。
その想いに蓋をするように目を瞑る。
「眠いのか?」
「少し……」
見ているだけだったのに一晩中起きていたせいなのか、本当に疲れきっていた。瞼が重い。
「すまない」
志信くんはそれっきり黙ってしまった。
(何に対して謝ったの……?)
“月天の儀”に付き合わせたこと?それとも、離れに閉じ込めていること?
謝罪の言葉は確かに聞こえていたのに、私は返事も出来ずに夢路を辿った。