今宵も、月と踊る

(帰りに買って行こう)

そう心に決めてパソコンに向かっていると、都築さんからおいでおいでと手招きされる。

「暑いところ悪いんだけど、郵便局までお使いしてきてくれる?」

「いいですよ」

暑中お見舞い用のはがきと切手を買ってくるようにと、現金入りの封筒を渡される。

金額を確かめるように中身を開けていると、都築さんが己の財布から五千円札を取り出し、私の手に握らせてきた。

「ついでにコンビニに寄ってきてもらえない?適当にアイスを買ってきてちょうだい」

「いいんですか?」

「あいつらの口にアイスでも突っ込んでやらないと、うるさくて仕事にならないわよ」

……さっきから、“あー”だの“うー”だの、暑さに呻いているのは波多野くんだけではない。

私は間一髪、吹き出しそうになるのを我慢すると日傘とバッグを持って郵便局へと出掛けた。

「行ってきます」

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