今宵も、月と踊る

三好屋に帰る鈴花とは店を出たところで別れた。

志信くんとの待ち合わせまで時間があったので、私はかなり久し振りのショッピングに興じることにした。

休日の混み合う街中を、これといった当てもなく彷徨う。

適当に目についた店に入っては、ハンガーにかかっている洋服をぼんやりと眺めて店員に声を掛けられる前に出て行く。

夏真っ盛りの今のシーズンで店内に置かれている洋服は、あまり着ないカラフルな色ばかりで気に入るようなものは少ない。

(まあ、無理して買うこともないか)

ひとりで外出する機会など滅多に作ってもらえないから買い物でもしようと思ったが、時間帯が悪かった。

真夏の昼下がり、最高気温37℃。

この炎天下では歩いているだけでも体力が奪われてしまう。

私はようやく見つけた日陰に避難すると、ハンカチで額に掻いた汗を拭きとった。

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