今宵も、月と踊る
帰りたい。でも、帰れない。
志信くんのことを思い切り拒絶したくせに、どの面下げて帰ったら良いの?
誤解されたことが悲しかった。襲われたこともショックだった。
……そして、なにより自分の想いに気づいてしまったことに苦しんでいた。
(志信くんのバカ……)
頭の中はぐちゃぐちゃで、とても整理できそうにない。
ただの歳の差カップルならこの世の中にごまんといるのに、どうして私達は“カグヤ”と“カグヤ憑き”なのだろう。
どんな夜空にだって月は輝き星も瞬くというのに、私の心だけがほの暗い闇に包まれている。
誰かを愛するって、もっと幸せなことだと思っていた。
両親も兄夫婦も鈴花と俊明さんも皆、嬉しそうに笑っているというのに。
どうして私ばかりこんなに苦しい思いをしているの?
(不思議だわ……)
志信くんに対してこんな気持ちを抱くようになるとは、出逢った当初は思いもしなかった。