今宵も、月と踊る

**********

夜明けより少し前。

空が白み始め鳥が朝を告げるように鳴き出すと、一人用の布団の中で目を覚ます。

めくれた毛布から感じる冷気に身震いすれば、深まりつつある秋の気配を強く感じた。

猛暑と言われた夏を過ぎると、朝晩は少しずつ寒くなってくる。抗いようのない自然の摂理だ。

……“カグヤ憑き”が“カグヤ”を求めるのと同じようなものだ。

膨らんだ布団の中には温かさを感じさせるものがもうひとつ。

こちらに背を向けてすうすうと寝息を立てているのは“カグヤ”こと“桜木小夜”というひとりの女。

男と同衾しているのに呑気に寝ていられる神経の図太さに、毎度のことながら感心してしまう。

信用されているのか。単にオスとして認識されていないのか。さっぱり分からない。

俺は8つの歳の差など大したことないと思っているが、こういうことは女の方が敏感だ。

そのせいなのか夏の間はそれこそ恋人のように街を出歩くことも車で遠出もしたけれど、小夜とは清い関係が続いていた。

< 201 / 330 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop