今宵も、月と踊る
今更気づいたところでどうしようもなかった。
何もかもが遅すぎたのだ。
舞い始めて何時間が経っただろうか。
最後のひとさしを終えると、床に手をついて頭を伏せた。
祈りが届いたかどうかは分からなかった。やれるだけのことはやったという満足感が胸を占める。
月渡りの間を出て狩衣姿のまま俺が向かうのは自分の部屋でも小夜のいる離れでもなく、この屋敷で最も日当たりの良い南に面した本宅の一室だった。
入室の問いかけも、主の許可も待たずに襖を開ける。
……真尋は今日も静かに眠っていた。
庭から差し込む月明かりが病人のように頬のこけた青白い顔を照らしている。快活で笑顔の絶えない少女だった頃の面影はない。
「お前はいつになったら目覚めるんだ……」
……真尋は答えない。
枕元の花瓶には季節外れだというのに真尋の好きな向日葵が活けてあった。