今宵も、月と踊る

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「いらっしゃいませ……って、小夜じゃない。ひさしぶり」

「ひさしぶり、鈴花」

来客に意気込んだ鈴花は私を見た途端に、元のように椅子に腰掛け直した。

着物の採寸をしてからといものの、三好屋からは随分足が遠のいていたことを申し訳なく思う。

今日は真っ直ぐ帰るように言いつけられている運転手さんに無理を言って、仕事帰りに三好屋に連れてきてもらったのだ。

「お店はどう?繁盛してる?」

「ちょうど良いところに来たわ、ホント。退屈で死にそうだったのよ!!」

高級応接セットのテーブルをゲジゲジと齧りそうな勢いの鈴花に押されるようにして、暖簾の奥にある従業員用の休憩室に連れ込まれると、すぐさまお茶と茶菓子が用意された。

「珍しいのね。今日は接客しないの?」

……三好屋の若女将にのんびりお茶を飲む余裕などあるのか。

年明けに成人式を控えているせいか平日の夜だというのに三好屋の店内は混み合っており、従業員達は来客の対応や品出しにいとまがない。

鈴花は腹を立てているのか大袈裟にズズズとお茶をすすると、口を尖らせやや拗ねた口調で言った。

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