今宵も、月と踊る
(お酒でも飲もうか……)
アルコールの力を借りないと眠れそうになかった。
パジャマからラフな普段着に着替えて、財布と携帯をポケットにしまいコンビニに行く。
家にひとりでいる時はお酒を飲まないので、冷蔵庫に常備していないのだ。
アパートから歩いて5分ほどにあるコンビニは、夜中でも煌々と明かりが灯されている。
(どれにしようかな……)
お酒を買うついでに新発売のスナック菓子をチェックする。
悩んだ末によし今日はお前に決めたと、夏野菜バーベキュー味のポテトチップスをお酒と一緒にレジに持っていく。
会計を済ませコンビニから帰る途中で、ポケットに入れていた携帯が貴子からの着信を知らせた。
“もしもーし!!小夜?”
ぎゃーぎゃーと騒ぐがなり声に驚いて、思わず携帯を耳から離す。
「貴子、もしかして酔ってるの……?」
ストイックな貴子が大会前にベロベロに酔っ払うなどあり得ないことだ。
“父さんも小夜を呼べってうるさいのよー!!今から家に来なさい!!”
(悪酔いしてる……)
犯人は貴子のお父さんだった。
おそらく娘の緊張をほぐすために一杯注いでしまったのだろうが、貴子も貴子のお父さんも飲みだすと止まらない性質な上に、酔いが回ると酷い絡み酒になる。この様子だと若宮さんは既に潰された後なのだろう。