今宵も、月と踊る
(本当に、良い天気)
三好屋を出ると日差しの温かさを感じて天を仰いだ。
3カ月前、この町に降り立った時は冷たいとしか感じなかった風が、今では心地よく思える。
歩いていると春の陽気にあてられて、浮き足立ってしまいそう。
(えっと……。月岩神社はどっちだっけ?)
キョロキョロと辺りを見回すと、電信柱に小さく掲げられている看板を発見してそちらを目指す。
百合子さんが“月岩神社”という単語を出した時に戸惑ったのは内緒だ。
石段でこけた上に、見知らぬ男性に抱き止められたことは誰にも話していない。
ましてや、携帯の番号までもらったなんて言えるはずがなかった。
だって、彼は明らかに年下だったもの。