今宵も、月と踊る

ゆっくりと目を開けると、見知らぬ天井が見えてぎょっとした。

ここは一体どこだろう。先ほどまで神楽殿の前で舞の奉納を見ていたというのに。

それとも、これは夢の続きなの?

寝かされている布団も、眩しい白熱灯の光も現実の物と同じのように思えるけれど。

(何も考えたくない)

どうしてか、ひどく身体が疲れていた。熱でもあるのだろうか。

社会人になってから自己管理も仕事の内だから、体調には気を付けていたのに、風邪でも引いてしまったのか。

そう考えると立っていられないほどの激しい眩暈も納得がいく。

まどろみへの誘惑に負けてもう一度、目を瞑る。

とても怖い夢を見ていたような気がする。何かに追われて必死で逃げる夢だった。

先ほどから動悸が治まらない。

子供でもあるまいし、怖い夢を見たからといって何を恐れる必要があるというのだ。

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