今宵も、月と踊る
“うげ……。苦くて変な味……”
豊姫はうえっと舌を出した。
大昔はココアなんて苦い物はなかったに違いない。味覚に合わなかったのだろう。
水をコップに入れて、豊姫に差し出す。ちなみに水は魂が抜けても、味が対して変わらないのでそのまま飲める。
「今度は苦くないやつを買ってくるね」
咳き込む豊姫があんまりにも気の毒だったので、今度平安時代の甘味について勉強しておこうと心に決める。
食後のデザートを食べ終わると、私は文机に置いてあったノートパソコンでネットサーフィンを始めた。
“これはなに?”
「ToTubeっていう動画サイトよ」
“すごい!!箱の中で人が動いているわ!!”
「そうね。すごいわね」
テレビもない離れの中でパソコンだけが唯一の娯楽だった。