今宵も、月と踊る

……志信くんがその日、離れにやって来たのは、日付も変わった夜半過ぎのことであった。

「起きているか?」

襖が敷居を滑る音がして、ぼうっとしながら目を覚ます。

「し……のぶ……くん……?」

「今週の土曜の夜、空けておいてくれ」

わざわざ口に出して言わなくても、志信くんの許可なしにどこにも行けないのに。

返事もせずにウトウトと頭を揺らしていると額にキスを落とされる。

「おやすみ」

志信くんの体温にくるまれて、ふたりで眠る。あの一件があってから、彼は毎夜隣で眠るようになった。

……私がいることを何度も確かめるように。

夜になるとわざわざ本宅から渡り廊下を通って離れにやってきて、朝になると一緒に朝食を取って、私を車に乗せて会社へと送り出す。

20歳の男の子なら、友達と遊んだり、旅行に行ったりと、他にも沢山することはあるだろうに。

時々、その執着が怖くなることがある。

志信くんは、私に構ってばかりいて楽しいのかしら……。

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