今宵も、月と踊る
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「バーベキュー?」
「そう。今週の土曜日。ちなみに俺が幹事な」
波多野くんは名簿を手渡してきた。名前の横には参加を示す丸や、途中参加を表明する三角印やらが各々書きこまれていた。
(土曜日か……)
どちらにせよ、参加不可だ。
私は名簿から自分の名前を見つけ出すと、大きくバツ印を書いて波多野くんに返した。
「なんだよ?行かねーの?」
「用事があるの」
「どうせ大した用じゃねーんだろ?来いよー!!桜木が来ないと誰が会費の回収するんだよー!!」
「幹事は波多野くんでしょうが」
さては、面倒な金勘定は私にやらせる気だったな、この野郎。
食い下がる波多野くんをシッシッとデスクに追い返すと、ようやく静かになった。
「都築さんは行かれるんですか?」
「子供がいるもの。行かないわよ。早々に辞退したわ」
「あー。そうですよね」
下の娘さんは今年小学校に入学したばかりだというし、平日は忙しいお母さんと過ごせる休みの日を奪うのは実に忍びない。
都築さんが最初のお子さんを出産されたのは今の私と同じ28歳だという。
私ときたら出産どころか、結婚もまだである。この差は何なのだろう。