アドベント・カレンダー
それからも何度も打ち合わせのために立ち寄ってはいたが



話しかけるタイミングもきっかけもなく、日は過ぎていった。




クリスマスも近づいてきたある日



打ち合わせを終えてロビーに降りた所、


「あのっ!」



呼び止められた。



振り返ると、希美子で思わずドキリとした。



「これ、お忘れではないですか?」



慌てて追いかけてきてくれたらしく、少し息が上がっている彼女の差し出した手には



俺のマフラーが握られていた。



首元に手をやって、初めて気づく。




「あっ、本当だ。ありがとう、助かったよ。」



受け取ると、「間に合ってよかった」と微笑み、会釈して去ろうとするから



「ちょっと待って!」



つい、呼びとめてしまった。不思議そうに首を傾げる彼女に



「お礼に、そこでお茶でもどうかな?」



自分でもびっくりするくらいサラリと口からそんな言葉が出た。
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