もう一度君の笑顔を
気丈に振る舞う友紀を見て心が痛んだ。


女の醜い争いに友紀を巻き込まないで欲しかった。


それに、友紀を悪者のように言う噂に営業部のおじ様達が黙っていなかった。


真面目で、根性もあり、思いやりもある友紀は、家で娘に邪険にされているおじ様達の隠れた癒しだ。


そんな友紀を傷付けられて黙っているはずが無い。


結構上の立場にいるおじ様達は、その権力をフルに使い、中野光輝を叩き始めた。



そこそこで止めときゃ良いものを大胆にやるもんだから、友紀の耳に入ってしまった。


中野光輝をかばい、おじ様達を宥める友紀、そんな友紀のけなげさに増々友紀の味方になるおじ様達、もう営業部は軽くカオスだった。




そんなこともあり、中野光輝を一発殴ってやろうかと声をかけたのに変な事になってしまった。


高級レストランへ連れて行かれ、殴ることも出来なかった。


というか、奴のヘタレっぷりを目の当たりにしてしまった。


薄々感じてはいたが、中野光輝は友紀に起こっていたことは何も知らなかったようだった。


まぁ、そもそも奴が原因なのだから、友紀がそれを相手に話すはずも無い。



事実を知った中野光輝の動揺はかなりのものだろう。


問題は、これを知った中野光輝がどうするかだ。


要求は伝えてある。もし、1週間以内に噂を収束できなかったら、会社の役員に色目でも使って、地方へ飛ばしてやろう・・・。


まぁ、一番良いのは、噂が消えて、二人が話し合い、友紀が前に進めることだけど。


このままだと友紀は、しばらく次の恋愛が出来ないだろう。


正直、友紀を幸せにしてくれるのなら誰だっていい。



ただ、中野光輝と付き合っているころの友紀の幸せそうな顔が脳裏に浮かぶ。


甘えるのが苦手な友紀をあんな表情に出来る男が他にいるだろうか?


まぁ、どっちにしろ、これ以上は私にはどうする事も出来ない。


後は、中野光輝の頑張り次第だ。
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