もう一度君の笑顔を
『野崎修司』は私の叔父に当たる人だ。


お母さんの弟で、今年48歳になる。


大手製薬会社で部長さんをしているエリートなんだけど・・・独身だ。



理由は多分、私のお母さんだと思う。


修ちゃんは、決して口にしなかったけど、多分、お母さんの事が好きだったんだと思う。


姉弟って言っても、おじいちゃんとおばあちゃんが子連れの再婚だから、お母さんと修ちゃんは血がつながっていない。


だから、修ちゃんがお母さんのことを好きでも何の問題もないんだけど、修ちゃんの中では違ったらしい。


多分、お母さんは修ちゃんの気持ちに気づいてなかった。


それが修ちゃんにとって良かったか、悪かったかは分からないが、お母さんが亡くなって10年経つのに未だに彼女が出来る気配もないのはお母さんのことが忘れられないでいる証拠だと思う。


小さい頃にお父さんを亡くした私にとって、修ちゃんはお父さん代わりだった。


父親参観も、運動会も修ちゃんが見に来てくれた。



だから、修ちゃんは、私にとって叔父さん以上の存在だ。


お母さんを亡くして、修ちゃんのお父さんであるおじいちゃんも、おばあちゃんももう亡くなってしまった。


修ちゃんと私は、同じ大切な人を亡くした経験を共有するただ一人の人だ。


修ちゃんは、私をとても大切にしてくれる。


そこには姪としてだけではなく、色んな思いがあるのだと思う。



姪であり、娘のようであり、そして、最愛の人の忘れ形見である私。



そんな修ちゃんは毎年私の誕生日を祝ってくれる。


もちろん、私も修ちゃんの誕生日を祝う。


修ちゃんは、『いい年こいたおっさんの誕生日なんて祝う必要ない』って言うけど、止められない。


修ちゃんだって、ホントに止めたいと思ってないと思う。



お母さんが生きていた頃、毎年必ず修ちゃんの誕生日を3人で祝ってた。




結局、修ちゃんも私も、お母さんの生きていた頃の習慣を止められないのだ。





< 43 / 80 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop