もう一度君の笑顔を
友紀から視線をそらして、佐々木さん達の方を見ると、明らかに動揺していた。


「ち、違うんです!」


「何が?」


自分でも驚くほど低い声が出た。


その声に、佐々木さん達は怯えたような表情になる。


「は、林さんは人の彼氏に色目を使うって評判だから、それで、高城さんはそれを知らないみたいだから・・・」


その言葉を聞いて、友紀が佐々木さんを睨んだ。


何かを言いかける友紀を制して、言った。


「林さんに色目を使われた記憶は無い。彼女は仕事上の悩みを口実に俺を誘った訳でもないしね・・・」


それは、前に、佐々木さんに誘われた時に彼女が言った口実だった。


俺の言葉に動揺する佐々木さんと、訳がわからないという顔をする二人。


ここで、誰かを悪者にするわけにはいかない。


今までの事を考えると、また友紀がとばっちりを食う事になる。


「俺が不甲斐ないせいで色々変な噂が立ってるみたいだけど、全部デマだから。

 みんなが俺を気遣ってくれるのは嬉しいけど、高城さんに非はまったくないから。

 もし、そんな噂を耳にしたら、否定しといてくれないかな?じゃないと、俺も仕事しづらくて。」


そうにっこりと笑うと、佐々木さん達は、「わかりました!」とか「任せて下さい!」などと言う言葉を口々に言い、足早に去って行った。


3人が見えなくなると、大きなため息が出た。



「友紀・・・さっきの林さんとの事だけど・・・」


「うん・・・」


食事に何て行っていないことにすればいいのかも知れないが、林梨花が友紀に嘘をつくかは分からない。


林梨花は俺とどうこうなろうなんて全く考えてない。


でも、もし友紀が勘違いしてしまったら?


友紀は林梨花と気まずくなってしまうかもしれない。



俺のせいでそんなことになるのは申し訳ない。

かといって、彼女が俺に何を言ったかを友紀に言うとも考えづらかった。


さて、どう言おうか・・・・




「林さんは、友紀の事が好きなんだな・・・」



咄嗟にそんなことを言ってしまった。

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