もう一度君の笑顔を
「初めまして、友紀の叔父の野崎です。」


「友紀さんの会社の同期で中野といいます。」



「もしかして、友紀の恋人ですか？」



「えっ・・・・」



そう尋ねられ、咄嗟に言葉が出ない。



友紀とは別れたが、友紀はその事を忘れてしまっている。



思わず友紀を向くと、野崎さんも友紀を見た。


友紀は恥ずかしそうに顔を真っ赤にしていた。



「修ちゃん！別にいいでしょ？」



照れくさそうに言う友紀は思わず抱きしめたくなるほど可愛かった。



そして、その表情で友紀が俺と別れた記憶が本当にないのを確信した。



野崎さんが友紀から俺に視線を戻す。



真っ直ぐ見つめられ、俺は覚悟を決めた。


「友紀さんとお付き合いさせて頂いてます。中野光輝と申します。」



視界の端の方で、林梨花が眉間に皺を寄せるのが見える。



俺はそれを無視した。



友紀のあんな顔を見て、ホントのことなんて言えない。



でも、そんなのいい訳だ。



最低な俺は、友紀が記憶を無くしたことこ喜んでいた。



暗い感情が自分を支配する。



このまま友紀が記憶を取り戻さなかったら？



友紀とヨリを戻せるんじゃないか？



そんなことが頭をよぎる。



「やはり、そうでしたか。

　いきなり失礼な事を聞いてしまって申し訳なかった。」


「いえ、とんでもありません。」



「好青年で、安心しました。

　私には、友紀は可愛い姪ですから、変な男に引っかかっていないかと心配で・・・」



「修ちゃん、嘘くさい」



「馬鹿いうな。本心だよ。」




そう言って笑う野崎さんだが、俺は気づいてしまった。



俺を見るその目が笑っていないことに・・・。
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