もう一度君の笑顔を
「そろそろ面会時間が終わるんだが・・・

 どうする?今日、入院したばかりだし、心配なら、親族なら付き添ってもいいと言われてる。

 久々に一緒に寝てやろうか??」



「いい。いらない。」


「つれないな〜。昔はあんなに『修ちゃん一緒に寝よう』ってかわい・・・」


「大丈夫だってば!!」


からかうように笑う野崎さんを友紀は真っ赤か顔して遮った。


「はいはい。大人しく帰りますよ。」


そう言うと、野崎さんは友紀を見た。


その顔は、さっきまでとは違い真剣だった。



「ちょっとでもおかしいと思うとこがあったら、ちゃんと言うんだぞ・・・」


「うん。わかってる。」



「そうか・・・」



野崎さんは友紀に近づくと、頭に手を持って行ったが、そこには包帯が巻かれていて、手をとめ、代わりに頬を撫でた。



「大丈夫だよ。心配しないで。」


野崎さんを安心させる様に言う友紀に、野崎さんは苦笑した。



「ホント、お前はいつまでたっても心配が絶えない」



「アラサーの姪の心配ばっかしてないで、自分のこと考えなよ・・・」



俺の中での友紀は自分よりも相手を思いやる、控えめだけど芯は強い大人の女というイメージだった。


でも、今、目の前で野崎さんと話す友紀は、俺の中の友紀のイメージよりちょっと幼く思える。



1年付き合っても知らない部分てあるもんだな・・・


そんなことを思いつつ、2人の間には他人が入り込むことが出来ない絆がある様に感じた。



正直、あの時の男が友紀の叔父だと分かって、友紀の記憶喪失を知った後じゃなかったら、もっと驚いていたと思う。



叔父さんに嫉妬してくだらないことを繰り返して振られてしまうなんてダサ過ぎだ。



ダサいとは思うけど、叔父だと分かっても野崎さんに嫉妬している自分がいる。



結局俺は、自分以外の男と友紀が楽しそうにしているのが嫌なんだ。




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