もう一度君の笑顔を
白い壁に、白いシーツとベット。


そこに横たわる友紀が10年前に死んだ最愛の人とかぶって、思わず首を振った。



俺が、千佳と出会ったのは、小学校5年の時だった。


親父が連れて来た再婚相手の子供。



小さい時に母親が他に男を作って出てってから、親父が男で一つで俺を苦労しながら育ててくれたのは知っていたから、親父が結婚するのは特に反対してなかった。


でも、心の中で、結婚すれば、親父も俺の事なんてどうでもよくなって母親が俺を捨てたみたいに捨てるんじゃないかって思っている部分もあった。




そんな気持ちを吹っ飛ばしたのが義理の姉になった千佳だった。


千佳は、俺がどんなに鬱陶しがっても俺を必要以上にかまって来た。



表向きは千佳を邪見に扱っていたが、心の中では嬉しく思っていた。



明るく、優しい千佳を好きになった。



それが、姉としてではなく、一人の女性として好きなのだと自覚したのは中学に入ってから。


気持ちを自覚してすぐに千佳は大学に進学して一人暮らしを始めた。



気づいた時から、叶わない恋だと思っていた俺は、離れて暮らす事で、その思いを忘れられると思っていた。


千佳を忘れるために彼女も作った。


でも駄目だった。



正月や、ちょっとしたことで千佳が家に帰ってくるたびに俺の思いは強くなった。



もう開き直って、千佳を忘れることを諦めたのはいつの事だっただろうか。



思うだけなら大丈夫だと自分に言い聞かせ、それでも周りに思いがさとらえれない様に細心の注意をはらった。


そうして、過ごしている時、千佳の結婚が決まった。


相手は、大学から付き合っている2つ上の男だった。


友紀の父、政之は男の俺から見てもいい男だった。




そんな義理の兄は、千佳と結婚する時に、


「千佳は必ず俺が幸せにするよ。」


そう言った。


「そういうのは父親にいうもんだろ?」


そう言った俺に、


「まぁね、もちろんお義父さんにも言うけどね。

 修司くんにも言っといた方がいい気がしたんだ。」


そう言って笑った。
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