Change!俺とアイツの怒涛の9ヶ月日記
「相変わらず、歌うまいよなー」
椅子に座るなり、恵介に言われた。
遊びに行くって言っても、外は寒いし。
無難なところで、カラオケに入った。
「海司って苦手なことあるの?」
「んー?あるよ」
恋愛とか。
そういうの、今まで縁がなかったし。
「おい、花音。曲入れたのか?」
「あー、うん。入れた」
花音との付き合いは、恵介と同じくらい。
いや、それ以上にあるけど。
一緒にカラオケに行ったことって、一度もないよな。
どんなふうに歌うんだろ?
ちょっと興味あったりして。
「あー、喉乾いた」
1曲歌うと、結構喉が渇くよな。
チューッとオレンジジュースを飲んだその時。
スピーカーから流れて来た歌声に、飲んでいたジュースを吹き出しそうになった。
「ちょっ…」
ひ、ひでぇ。
なんつー歌声だよ。
リズムは合ってねぇし、音程も外しまくり。
花音は音痴だったのか。
ホント、こいつ。
得意なことはねーんだな。
そんなことを思いながら、隣に座る恵介に目を向けた。
そうしたら恵介は、なぜか目を細めて。
にっこりと優しい顔で、花音のことを見つめていた。