恋宿~イケメン支配人に恋して~
「……このヤロー……人が折角皿受け止めてやったのに……」
「す、すみません……」
「許さない。1ヶ月と3日追加だな」
「あー!!」
また追加された!
けど元々は千冬さんがいきなり体近付けたりするから……!さすがにあんなふうにいきなりくっつかれたりしたら、ドキドキしてしまう。
布越しでも感じられた、その体のかたさと大きさ。細く見えてもしっかりとしていて、やっぱり男の人なんだな。
重なった手はこの手を包み込むほど大きくて、ごつごつとしていて。……これで意識するなって方が無理でしょ。
すると不意に千冬さんのスーツの胸ポケットから聞こえた、ヴー、と鳴った携帯のバイブ音。
「ん?フロントから電話……はい、芦屋です」
電話に出る千冬さんの一方で、私は渡された皿を受け取り、慎重に元あった場所に戻す。
「理子?あぁ、丁度今ここにいるけど……わかった、今向かわせる」
そして通話を終えると、彼は携帯をしまい私のほうを見た。
「おい理子、フロントに行くぞ」
「へ?なんでですか」
「お前に客が来てるそうだ」
「客……?」
へ?私に、お客……?
ここに旅行に来ていることはもちろん、働いていることも当然誰にも言っていない。
それ故に自分を訪ねてくる人など思いつきもせず、きょとんと首を傾げながら千冬さんに続いて廊下を歩きだす。