恋宿~イケメン支配人に恋して~



「……このヤロー……人が折角皿受け止めてやったのに……」

「す、すみません……」

「許さない。1ヶ月と3日追加だな」

「あー!!」



また追加された!

けど元々は千冬さんがいきなり体近付けたりするから……!さすがにあんなふうにいきなりくっつかれたりしたら、ドキドキしてしまう。



布越しでも感じられた、その体のかたさと大きさ。細く見えてもしっかりとしていて、やっぱり男の人なんだな。

重なった手はこの手を包み込むほど大きくて、ごつごつとしていて。……これで意識するなって方が無理でしょ。



すると不意に千冬さんのスーツの胸ポケットから聞こえた、ヴー、と鳴った携帯のバイブ音。



「ん?フロントから電話……はい、芦屋です」



電話に出る千冬さんの一方で、私は渡された皿を受け取り、慎重に元あった場所に戻す。



「理子?あぁ、丁度今ここにいるけど……わかった、今向かわせる」



そして通話を終えると、彼は携帯をしまい私のほうを見た。



「おい理子、フロントに行くぞ」

「へ?なんでですか」

「お前に客が来てるそうだ」

「客……?」



へ?私に、お客……?

ここに旅行に来ていることはもちろん、働いていることも当然誰にも言っていない。

それ故に自分を訪ねてくる人など思いつきもせず、きょとんと首を傾げながら千冬さんに続いて廊下を歩きだす。




< 103 / 340 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop