恋宿~イケメン支配人に恋して~
「理子ちゃん、千冬さんと仲良いねぇ」
「え!?」
チェックインの準備を終え、八木さんとふたり廊下を歩いていると彼女からこぼされた一言に、つい驚きの声をあげる。
ち、千冬さんと仲が良いって……八木さんに誤解されている!?
「ぜっ全然ないです!仲良くないです!」
「そう?仲良いと思うよー?やっぱり千冬さんも若い子には弱いのかなぁ」
ふふ、とからかうように笑う八木さんに慌てて否定するものの、その表情は信じていなさそう。
八木さん……自分の彼氏と他の女をにこにこと冷やかすなんてどういう意味なんだろう。
彼女の余裕というものなのか、それとも嫌味なのだろうか。どちらにせよ修羅場はいやだ……!
背中にたらりと嫌な汗が一筋伝う。
すると向かいからは、ほかの仲居に案内されながら歩く一組のお客さん。
「あれ……チェックインの時間、まだのはずじゃ」
「多分早めに来ちゃったんだろうね。そういう人もたまにいるから」
そう言いながら足を止め、お客さんに「いらっしゃいませ」と頭を下げる八木さんに続き、私も頭を下げた。