恋宿~イケメン支配人に恋して~



「それでも高校生の頃は彼女連れてたりしたんだけどねぇ」

「だって千冬くん、あの頃可愛い顔してたもの!あっ、理子ちゃんは見たことないわよね、写真見る?確かここに……」



箕輪さんを始めおばさんたちは、口々に言うと、部屋の奥の棚からお菓子が入っていたらしい四角い缶を取り出した。

その中から出てきたのは、沢山の写真。どれもこの旅館で撮られたものらしく、古いものから比較的新しいものまでいろいろとある。



「ほら、これ!」



箕輪さんがテーブルに置いた1枚は、旅館の前で撮られたらしいもの。そこに写っていたのは、金色に近い茶髪をして片耳にピアスを二つほど開けた、学ラン姿の男子高校生……そう、高校生の頃の千冬さんだ。



「わっ……柄悪い」

「でしょう?あの頃はヤンチャでねぇ、しょっちゅう喧嘩しただの怒られただのやっててね」

「今も綺麗な顔してるけど、この頃はまた幼い顔してて可愛いのよね~」



言われてみれば、確かに今より幼い顔をしている。少し目つきは悪いけど、どこかあどけないというか……確かに、可愛いかも。

けど本当にやんちゃそうな顔だな。真っ黒な髪にピアスのない今の格好からは想像のつかない姿に、しみじみと見てしまう。



どの写真を見てもぶすっとした無愛想な表情の彼に、やはり仕事中の顔は愛想笑いでもともとクールなのだろう。



「あれ……これは、」



その中で目についた1枚は、学ラン姿の千冬さんが、少し照れ臭そうな顔をして中年の男女に挟まれて旅館の前に立っている写真。

その手には茶色い筒が、胸にはピンク色の花がついている。


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