恋宿~イケメン支配人に恋して~
「っ……」
こわかった、いやだった。だけど、千冬さんを見た瞬間安心した。
よかった、来てくれた。千冬さんなら大丈夫だって心から思えた。
気付かぬうちに彼にこんなにも信頼を寄せていた自分にも驚いたけれど、それ以上にあたたかな気持ちで胸が埋めつくされていく。
「っ……こわかった……、こわかったぁぁ~……」
「……よしよし、」
子供のように一気に泣き出す私に、千冬さんは顔から手を離すとそのまま優しく抱きしめた。
ごつごつとした体。触れるスーツのジャケットと白いワイシャツからは洗剤と千冬さんの匂い。
それらに包まれるだけで、心は穏やかさを取り戻す。
なだめるように頭を撫でる手の優しさが、愛しい。
……どうして、こんなに優しいんだろう。
いつもは怖くて愛想だってなくて、なのに時々こうして彼はこんなにもあたたかい。
迷った時にはヒントをくれる。危ない時には助けてくれる。
何度も何度も、救われている。
「助けてくれて……ありがとうございました」
「……どういたしまして」
小さく呟いたお礼に小さく笑うと、抱きしめる腕に力が込められたように感じた。