恋宿~イケメン支配人に恋して~
10.落日に願いを
青い空、太陽差し込むあたたかな空気。
「暇だねー……」
「暇だー……」
穏やかな昼間の休憩室で、皆は雑誌やテレビを見ながらだらだらと過ごしている。
旅行22日目の今日は、なんとも暇だ。
6月下旬は特に暇な時期らしく、昨日も宿泊客は少ない。午前中にチェックアウトとお見送りをしてから大して仕事もなく、今日の宿泊者も少ないからチェックイン準備もおそらく早々と終わるだろう。
おかげでいつもは忙しい皆も、手持ち無沙汰にお茶を飲むしか出来ずにいる。
「こんなに暇でこの旅館大丈夫なんですか」
「うん、この時期はどうしても仕方ないよねぇ」
「でも来月からは毎日のように満室で一気に忙しくなるのよ~。だからゆっくり出来るのも今だけ」
私の問いに答える八木さんと箕輪さんに、「へぇ」と頷き湯のみのお茶を一口飲む。
そっか、この時期はこんなに暇な日もあるんだ……。そんな時期に働くのは、まだラッキーだったかな。
けど毎日満室なんて……大変だろうなぁ。
そんな他人事のような気持ちで、ついているテレビのローカル番組を見る私に仲居のひとりであるおばさんはふと気付いたように言う。