恋宿~イケメン支配人に恋して~
「……嫌ですよ、なんで休日までこいつのお守りしなきゃいけないんですか」
「な!?お守りって……」
「そんなこと言わないの!理子ちゃんこっちに来てまだ一度も街に行ってないらしいのよ!折角だし、ね!」
本当は断りたいのだろう。けれど先ほど自分で『何人か早退していい』と言ってしまったことと、箕輪さん始めおばさんたちの「そうね!」「そうよ!」と強い押しに、彼はぐっと言葉を飲み込み諦めたように溜息をつく。
「……わかりましたよ。行けばいいんでしょう、行けば」
「そうこなくちゃ!理子ちゃん、新藤屋支配人直々のガイドなんて貴重よ!行ってらっしゃい!」
「けど、私仕事……」
「今日くらい休んでもバチ当たらないよ。楽しんでおいで」
いくら暇とはいえ1ヶ月雇われているのに、と一度は躊躇うものの、八木さんにも優しく肩を押され渋々頷く。
「ならさっさと着替えて来い。急げ」
「えっ、あっはい」
そして急かされるように、私は休憩室を出た。