恋宿~イケメン支配人に恋して~
それから私と千冬さんは、ひたすら石段をのぼりながらあれこれと伊香保の街を満喫した。
流れて行く温泉の源泉を見ることが出来る小満口や、途中にある足湯。道に印される十二支の印など……。
目に付くもの全てにいちいち足を止めたずねる私に、彼は嫌な顔をすることもなく丁寧に教えてくれた。
その知識と丁寧な教え方から感じたのは、彼がこの街で生まれ育ち、そしてこの街を好きでいるということ。
そんな千冬さんの話を聞くうちに、見た目の印象で選んでここへ来ただけの私も、いつの間にかこの街の歴史や人が好きになっていた。
たくさんの人と記憶に溢れ、どこか懐かしい匂いのする、この街のこと。